斉藤真理子の待望の新作『アイ・ウィッシュ・ユー・ラブ』(通算3作目)は、なんと「ボーカル・アルバム」である。これには、驚いた。真理子は、歌がとても上手くしかも本格的である。元々ピアニストとしての真理子は、日本のジャズ・シーンの中でも一目置かれるずば抜けた存在である。日本では女性ピアニストが増えてきたが、彼女のようにちゃんとビバップが弾けて、ハービー・ハンコックまでカバーしている存在は、ちょっと見当たらない。彼女はデビュー当時、弾き語りをしていた。そして2年ほど前から、また歌い始めた。本人の中で、何か安らぎの様なものを求めるようになったのかもしれない。本作を聴くとよくわかるが、彼女は歌うことでピアノもより歌うようになり、もう1段高いレベルに上がったと思う。歌唱は“ソウル”が感じられ、ダイナミックで好ましい。またピアノをやってきたことで、リズムや音の起きどころが他の歌手と違って優れている。
真理子のようにピアノも上手く、正統派のボーカルを聴かせてくれるアーティストは、
日本ではとっても珍しい。しかし世界を見渡すと、ダイアナ・クラールが思い浮かぶ。ダイアナと真理子は、最大のアイドルがカーメン・マクレエと共通しているところが興味深い。カーメンはピアニストから歌手に転じた。スケールの大きな歌唱で、歌の雰囲気が抜群だ。そして、明確な表現力、伝えたいメッセージを感じさせる。カーメン・マクレエ、ダイアナ・クラール、斉藤真理子の3人は、歌だけでなく、ピアニストとして一流な点が共通している。また圧倒的で情熱溢れる歌唱もよく似ている。
<I WISH LOVE YOU 斉藤真理子ライナーノーツ>より抜粋